現在、欧州の低炭素地域づくりの調査のために欧州に来ております。9月2日、3日は、ドイツ南部の4か所をめぐりました。
初日となる9月2日の午前に訪問したのは、ミヒェルシュタットという小さな町にあるオーデンヴァルト市民エネルギー協同組合。行政機関、金融機関、そして市民が、組合という形式を使って、太陽光発電や風力発電の建設、低炭素型の建築物の建設・改修、そしてエコ電力の小売りなどの事業を進めています。組合事務所が入っている「エネルギーの館」は、もともとビール工場だった建物を買い取って回収したものなのだとか。窓は三重ガラス。写真のとおり、こんなにも厚み=断熱性能があります。この建物には、行政の建築部局や事業者も入っており、「ここに来れば、建築関係のすべてのことが解決する」そうです。組合では、エコロジカルな幼稚園を建築して25年にわたって行政に貸し出すという取り組みも行っており、エネルギーの館にも幼稚園がつくられていて、多くの子どもたちが元気に遊んでいました。
施設の駐車場の屋根は太陽光発電を兼ねており、併設されている建築物(工場、倉庫、食品スーパーなどに貸し出している)の屋根にはすべて太陽光発電が設置されており、その規模は1MWを超えています。太陽光発電を設置してそこから収益を得られているおかげで、安く貸すことができ、借り手にもメリットが生まれているそうです。
午後にうかがったのは、ビュルガーベルグ協同組合。市民エネルギー組合が共同で作った「組合の組合」です。小さな組合ではできないことを連携により行うためのもの。それは例えば、電力の小売りです。個別組合と連携して小売りを行うことで、個別の組合は、電力の生産者だけではなく、供給者になることができるとのこと。
2日目となる9月4日午前には、ミュルハイム・シュタウフェン都市エネルギー公社へ。2つの自治体が連携して公社を設立し、企業が所有している配電網を買い戻して再公有化したのが特徴的です。再生可能エネルギー100%の電力を地域に供給しています。加えて、パートナーとしての市民エネルギー協同組合も設立しており、太陽光発電だけではなく、小水力発電の開発も進めています。
そして、午後には、電力自由化以前に配電網の買戻しと再生可能エネルギー100%電力の小売り(+様々なサービス)を開始した、かの有名なシェーナウへ。現在では、EWSは地域最大の雇用を生み出す企業に成長しており、他地域の市民エネルギー組合設立や地域熱供給システム導入を支援するサービスも行っているとのこと。
すべてのヒアリング先で共通して感じられたのが、
(1)エネルギーの大転換を行うのだという、世論の後押しを受けた強い意志
(2)地域の再生可能エネルギー利用あるいや省エネルギーによって地域経済に好循環をもたらすのだという理念
(3)固定価格買取制度が変更になる中で、それでも再生可能エネルギー利用をさらに促進するため、新たなモデルを構築しようとするしなやかな強さ、等です。
組合設立や電力自由化等に関する法規制の面で、あるいは長年積み重ねられてきた文化的な面で、ドイツと日本には様々な違いはありますが、日本での「低炭素型のステキな地域」づくりにおいて、大いに参考になりそうです。
(きはら)
posted by center at 18:00|
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